コラム日和
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相続発生時のインボイスの扱い

2023年10月からインボイス制度(適格請求書〈インボイス〉を用いて仕入れにかかった消費税を控除できる制度)が始まって、はや2年。今回は、インボイス発行事業者である個人が亡くなった場合です。被相続人のインボイス登録の効力は、相続人には引き継がれません。被相続人の事業を承継した相続人がインボイスを発行するためには、改めてインボイスの登録申請をする必要があります。

インボイスは、買い手側が消費税の計算上、仕入税額控除を行うために必要なものです。原則的な課税方式により消費税を申告している事業者はインボイスが発行されないと仕入税額控除ができなくなります(経過措置あり)。インボイスを登録するためには、約1カ月かかるため、その期間インボイスが発行されないとなると、原則的課税事業者は仕入税額控除ができなくなり困ってしまいます。

そこでインボイス制度では、インボイス発行事業者である個人が亡くなった場合には、相続人が一定期間、被相続人のインボイスを発行できると定めています。この期間を「みなし登録期間」と呼び、相続開始の翌日から①と②のいずれか早い日までの期間、被相続人のインボイスは有効となります。①相続人が登録を受けた日の前日 ②被相続人の死亡日の翌日から4カ月を経過した日。

この仕組みによって、インボイス発行の空白期間をつくらないようにしています。また、相続人が相続開始前から事業を営んでいる場合には、みなし登録期間中は、もともとの相続人の売り上げについても消費税の申告義務があります。例えば、相続人(免税事業者)が相続開始前から駐車場や貸倉庫などを賃貸している場合には、相続人にインボイス発行事業者として登録する意思がなくとも、みなし登録期間中はその駐車場や貸倉庫の賃料についても消費税の申告をする必要があるということです。

JA全中・JA全国相続相談・資産支援チーム 顧問税理士●柴原 一

引用元「JA広報通信」