コラム日和
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新紙幣発行に伴う修繕費

このたび、紙幣のデザインが一新されました。樋口一葉と野口英世に代わったのがつい先日のように感じるのですが、もう20年経過したと聞いて驚くばかりです。これから新旧紙幣の入れ替えが進んでいくと思われます。さて新紙幣発行に伴い、レジや両替機、ATM、自動販売機などはシステムの改修が必要です。このシステム改修の費用は、資本的支出として資産計上し減価償却を経て費用化するのか、または修繕費として支出した年分の費用とするのか。キーワードは「通常の維持管理」と「現状回復」です。

修繕費とは、通常の維持管理、または現状回復のための費用をいいます。法令改正や行政指導等に対応するために、各種事務処理システムは適宜改修する必要があります。その改修は、機能を維持または回復させるためのものです。今回のケースでは、既存の紙幣だけでなく新紙幣でも利用できるようにするための改修であり、従来の機能を維持するために行うものです。よって原則修繕費に計上し、支出した年分の必要経費になります。類似の事例としては、消費税のインボイス制度の導入に伴うシステム改修の費用も同様の取り扱いです。

では、もしも今回のシステム改修の際に「今までは現金決済のみだったがキャッシュレス化に対応するための設備を新たに導入する」としたらいかがでしょうか。この場合には、従来の機能維持だけではなく、利便性の向上のために新たな機能が追加されています。よって資本的支出または新規資産の取得として資産計上し、減価償却により費用化していきます。「システム改修=修繕費」ではなく、その内容を見極めて資本的支出と修繕費とを判断する必要があります。

JA全中・JAまちづくり情報センター 顧問税理士●柴原 一

引用元「JA広報通信」