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相続税額の取得費加算の特例

財産を売却した場合、売却益(所得金額)は「収入金額-(取得費+譲渡費用)」によって計算され、この所得金額に対して所得税・復興特別所得税・住民税が課税されます。相続により取得した財産を売却したときは、取得費に関して特例が設けられています。具体的には、相続発生から3年10カ月以内に相続財産を売却した場合、譲渡所得の計算上、売却したものに係る相続税額のうち一定の部分を取得費の金額に加算するというものです。これを「相続税額の取得費加算」の特例といいます。この特例は、売却した相続財産の種類を問わず適用できます。

取得費に加算される金額は相続財産を売却した者ごとに計算します。具体的には、相続財産を売却した者の確定相続税額に、その者の債務控除前の相続税の課税価格のうち売却した相続財産の占める割合を乗じた金額になります。例えば、土地を売却した者の相続税額が1350万円、債務控除前の相続税の課税価格が2億4000万円、売却した相続財産の価額が8000万円の場合、取得費加算額は450万円(=1350万円×8000万円/2億4000万円)になります。

農地に係る相続税の納税猶予を受けた場合には、確定相続税額は猶予税額が含まれた金額、農地は農業投資価格ではなく通常の相続税評価額を基に計算した金額になります。なお、相続税の修正申告や更正の請求を行ったため相続税額が増減したときは、取得費加算額が変わってくるため、相続財産売却にかかる年分の所得税についても修正申告または更正の請求が必要になります。

この特例の適用を受けるためには、所得税の確定申告書に「相続財産の取得費に加算される相続税額の計算明細書」「譲渡所得の内訳書」などの書類の添付を行わなければなりません。相続税申告書の控えの添付義務はありません。

JA全中・JAまちづくり情報センター 顧問税理士●柴原 一

引用元「JA広報通信」