コラム日和
身近な草木 和ハーブ入門
リュウノウギク 香る野菊でリラックス
季節の身近な和ハーブを用いた日本のお風呂というと、端午の節句の「しょうぶ(菖蒲)湯」や夏場の「桃の葉湯」、冬至の「ゆず(柚子)湯」などが一般的によく知られています。一方であまり知られていないのが、旧暦9月9日の重陽(ちょうよう)の節句の「菊湯」かもしれません。
この日にお風呂で用いられてきたのは、リュウノウギクという野菊の一種です。花だけでなく草全体に良い香りがあり、カンフェンなど揮発成分を多く含んでいることから、リュウノウギクのお風呂に漬かることで血流をより高め、神経痛や腰痛などを和らげてくれる作用が期待できます。
ちなみにこのリュウノウギクという名は、茎や葉の香りが平安時代に珍重された香料の「竜脳」(原料植物は東南アジア原産の常緑高木「リュウノウ」)に似ていることから。日本では入浴剤の他、薬草茶や和菓子の素材としても活用されてきました。
そもそも菊は不老長寿の花とされ、体を温め、目の疲れなどにも良いことが知られています。海外ハーブのキク科、カモミールなども人気ですね。日本でも平安時代には重陽の節句の宮中行事で菊酒を飲んだりすることで、無病息災を願ってきました。
これらキク科の特徴でもある頭状花序(1枚の花弁に見えるが実は小さい多数の花が集まり、一つの花の形を成すもの)はタンポポ、アザミなど多数あります。さらにヨモギやフキもキク科であり、同科の植物は全世界で1万種を超えるとされます。葉に強い芳香を持つ野菊種としては他にイソギク、ノジギクなどがあります。食用には逆に香りや癖が少ないヨメナ、ノコンギクなどが向いています。
植物民俗研究家/和ハーブ協会副理事長●平川美鶴
引用元「JA広報通信」