マンションの新たな評価方法
JA全中・JAまちづくり情報センター 顧問税理士●柴原 一
現在、高層マンションの相続税評価の方法がマンションの価値の実態に即しておらず、時価と評価額がかけ離れていることが課題とされています。近年、首都圏を中心にマンションの市場価格は高騰しています。しかし、分譲マンションの土地の敷地利用権は、自身の専有部分に応じて持分が決まります。自用地としての評価額に持分割合を乗じるため、評価額が抑えられる傾向にあります。一般的には3000万円の戸建て(家屋とその敷地)と、3000万円のマンションであれば、3000万円のマンションの方が相続税評価額は低くなります。マンションの相続税評価額は、時価の3割程度であるといわれていて、この現状をうまく利用すれば租税回避が可能である点も問題視されていました。
そこで、新たにマンションの評価方法が令和6年1月1日から新設されることになりました。具体的にはまず、時価と評価額がどれくらい乖離(かいり)しているかを示す評価乖離率を算出します。評価乖離率は、マンションの築年数や総階数、自分が持っている部屋の所在階などを考慮して求めます。ほとんどの場合、その評価乖離率に「0・6」を乗じて区分所有補正率を求めます。現在の評価額にこの区分所有補正率を乗じて、新たな評価額が計算されます。さまざまなパターンで試算したところ、区分所有補正率は1・5~2・0くらいになることが多いようです。すなわち、今までの評価額が1・5~2倍になるということです。この計算式と、区分所有補正率を算出する際に乗じる「0・6」は、適宜見直しが行われるようです。この新たな評価方法による区分所有補正率の計算はかなり複雑であるため、納税者が簡易に計算できるツールが用意される予定です。
引用元「JA広報通信」