コラム日和
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被相続人の未払い医療費

わが国では約8割の人が、病院で亡くなるといわれています。入院している以上は医療費が発生しますが、病院で亡くなった人は自分の最後の医療費を払うことができません。この被相続人の未払い医療費は、家族など近しい方に請求されます。今回は、この被相続人の未払い医療費を支払った場合の税務上の取り扱いについてご紹介します。

まず、被相続人の未払い医療費は被相続人の債務に該当します。従って相続税の計算において、被相続人の未払い医療費を負担した場合には、債務控除として相続財産から差し引くことができます。

次に、所得税における考え方です。相続が発生すると4カ月以内に、被相続人のその年中の所得を確定させる準確定申告を行います。 医療費控除の対象となる医療費の金額は、その年中に実際に支払われた金額に限られます。未払い医療費は、実際に支払われるまでは医療費控除の対象にはなりません。よって被相続人の死亡後に支払われた医療費は、たとえ相続財産から支払われた場合であっても、被相続人が支払ったことにはならないので、被相続人の準確定申告の際には被相続人の医療費控除の対象とすることはできません。

しかし医療費控除は、自己または自己と生計を一にする配偶者やその他親族のために支払った医療費も対象となります。被相続人の未払い医療費を支払った人が、被相続人と生計を一にしていた場合には、実際に支払った人の医療費に含めることができます。医療費控除の適用を受けるためには、翌年3月15日までに確定申告を行う必要があるので忘れないようにしましょう。なお、別生計であった場合には、医療費控除の対象とはなりません。

JA全中・JAまちづくり情報センター 顧問税理士●柴原 一

引用元「JA広報通信」