コラム日和
永山久夫の健康万歳!

捨てるところがないスイカ

スイカが、原産地のアフリカからシルクロードを経て中国に入り、日本へ伝わったのは戦国時代の後期とみられます。当初は西から伝来したので「西瓜(せいか)」と呼ばれていました。

江戸時代に入り、水分が多いところから「水瓜(すいか)」となり、『本朝食鑑』(ほんちょうしょっかん)という書物では次のような記述があります。

「水瓜とは、すなわち西瓜のことである。水分の多いところから水瓜と名付ける」とあります。なにしろスイカの約90%は水なのです。

夏は冷やしたスイカが大歓迎されるのは江戸時代も現代も同じです。問題はどこで冷やすかで、次のような川柳があります。

大騒ぎ 井戸へ西瓜を 下女落とし

下女(女中)が井戸の中へ、どぼーんとスイカを落っことして大騒ぎ。夏の間中、どこの町内でも発生する大事件でした。

江戸時代のスイカの利用法について、『本朝食鑑』には「全体に捨てるところは一つもない。皮および白肉は、煮て食べたり、香の物にしたりする。紅肉は生食する。種子は、よくいって食べる」とあります。

スイカは利用価値の極めて高いウリでした。今でもスイカの皮は、煮たりぬか漬けにしたりする場合が少なくありませんが、これらは江戸時代以来の台所の知恵といってよいでしょう。

『本朝食鑑』は、スイカの効果にも触れています。「景気を消し、よく小水を制す」とありますが、スイカの利尿作用は、現代でもよく知られています。その成分はシトルリンという物質で、スイカには同じような働きをするカリウムというミネラルも含まれています。スイカ特有の赤い色素はリコピンという抗酸化成分で、体細胞の酸化、つまり老化を防ぐ上で役に立つと同時に、がん予防効果の高いことでも知られています。同じような作用のベータカロテンも多く、強い紫外線のダメージを予防する上でも効果が高いです。

食文化史研究家・日本の長寿食研究家●永山久夫

引用元「JA広報通信」